Excelで外れ値を見つける方法|平均がおかしいときは四分位(QUARTILE.INC)と箱ひげ図で確かめる
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月の売上をExcelで集計したら、1日あたりの平均がいつもより2万円も高い。「今月は調子がよかったのかな」と思う前に、一度だけ確かめてほしいことがあります。
0が1つ多い入力ミスが、1件まざっていないかです。
平均は、たった1件の大きな数字で大きく動きます。この記事では、売上や経費をExcelで集計している個人事業主や事務の方に向けて、そんな「おかしな1件」を見つける手順をまとめました。使うのは、四分位(QUARTILE.INC)、条件付き書式、箱ひげ図の3つです。
1. 平均と中央値の違い
例として、架空の20日分の売上を使います。 8日目の売上は本当は46,000円ですが、0を1つ多く打って 460,000円 と入れてしまった、という想定です。
A列に日付、B列に売上を入れます(1行目は見出し)。
| 行 | A(日付) | B(売上・円) |
|---|---|---|
| 2 | 10/1 | 52,000 |
| 3 | 10/2 | 47,000 |
| 4 | 10/3 | 55,000 |
| 5 | 10/4 | 49,000 |
| 6 | 10/5 | 58,000 |
| 7 | 10/6 | 44,000 |
| 8 | 10/7 | 51,000 |
| 9 | 10/8 | 460,000(本当は46,000) |
| 10 | 10/9 | 53,000 |
| 11 | 10/10 | 50,000 |
| 12 | 10/11 | 57,000 |
| 13 | 10/12 | 48,000 |
| 14 | 10/13 | 54,000 |
| 15 | 10/14 | 42,000 |
| 16 | 10/15 | 56,000 |
| 17 | 10/16 | 50,000 |
| 18 | 10/17 | 45,000 |
| 19 | 10/18 | 53,000 |
| 20 | 10/19 | 60,000 |
| 21 | 10/20 | 49,000 |
入力ミスがある場合とない場合で、平均と中央値をくらべます。
| 正しいデータ | 入力ミスあり | 差 | |
|---|---|---|---|
| 平均(AVERAGE) | 50,950円 | 71,650円 | +20,700円 |
| 中央値(MEDIAN) | 50,500円 | 51,500円 | +1,000円 |
平均は、20件をすべて足して20で割った数です。1件が41万円多いと、平均は約2万円上がります。中央値は、小さい順に並べたときの真ん中の数です。端の1件がどれだけ大きくても、ほとんど動きません。
平均と中央値が大きく離れていたら、どこかに極端な数字がある、という目安になります。
2. QUARTILE.INCで四分位と上限・下限を出す
次に、「どこからが極端か」を数字で決めます。よく使われるのが、四分位を使う方法です。
- Q1(第1四分位):小さい順に並べて、下から4分の1のところの数
- Q3(第3四分位):下から4分の3のところの数
- IQR(四分位範囲):Q3 − Q1。真ん中の半分のデータが入る幅
- 下限:Q1 − 1.5 × IQR
- 上限:Q3 + 1.5 × IQR
下限より小さい、または上限より大きい数を「外れ値の候補」とします。 1.5倍という数は、広く使われている目安です。決まりではありません。
式を入れる
D列に名前、E列に式を入れます。
| セル | 内容 | E列に入れる式 | この例の結果 |
|---|---|---|---|
| D1 / E1 | Q1 | =QUARTILE.INC(B2:B21,1) |
48,750 |
| D2 / E2 | 中央値 | =MEDIAN(B2:B21) |
51,500 |
| D3 / E3 | Q3 | =QUARTILE.INC(B2:B21,3) |
55,250 |
| D4 / E4 | IQR | =E3-E1 |
6,500 |
| D5 / E5 | 下限 | =E1-1.5*E4 |
39,000 |
| D6 / E6 | 上限 | =E3+1.5*E4 |
65,000 |
| D7 / E7 | 平均 | =AVERAGE(B2:B21) |
71,650 |
上限は65,000円です。460,000円は上限を大きくこえているので、外れ値の候補になります。下限の39,000円より小さい数はありません。
Q1が48,750になる理由
QUARTILE.INCは、小さい順に並べたときの「1 +(件数 − 1)× 割合」番目の数を出します。間にあるときは、前後の数の間を比例で分けます。
- Q1:1 + 19 × 0.25 = 5.75番目。5番目の48,000と6番目の49,000の間で、48,000 + 1,000 × 0.75 = 48,750
- Q3:1 + 19 × 0.75 = 15.25番目。15番目の55,000と16番目の56,000の間で、55,000 + 1,000 × 0.25 = 55,250
似た関数に QUARTILE.EXC があります。計算のしかたが少し違うので、同じデータでも値が変わります(この例ではQ1が48,250、Q3が55,750)。表の中では、どちらか一方にそろえてください。この記事では QUARTILE.INC を使います。
日本語版のExcelでも、関数名は英語のまま入力します。Googleスプレッドシートでも、同じ式が使えます。
3. 外れ値に自動で色を付ける(条件付き書式)
20件なら目で探せますが、何百行もあると見落とします。上限・下限の外にあるセルに、自動で色が付くようにします。
使う式はこれです。
=OR(B2<$E$5,B2>$E$6)
「B2が下限(E5)より小さい、または上限(E6)より大きい」という意味です。
$E$5 と $E$6 には $ を付けて、どの行でも同じセルを見るようにします。B2 には付けません。
Excel(Windows)
- B2:B21 を選ぶ
- 「ホーム」タブ →「条件付き書式」→「新しいルール」
- 「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選ぶ
- 数式の欄に
=OR(B2<$E$5,B2>$E$6)を入れる - 「書式」→「塗りつぶし」で薄い赤などを選び、「OK」→「OK」
Excel(Mac)
- B2:B21 を選ぶ
- 「ホーム」タブ →「条件付き書式」→「新しいルール」
- 「スタイル」で「クラシック」を選び、その下で「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選ぶ
- 数式の欄に
=OR(B2<$E$5,B2>$E$6)を入れる - 「書式」で「ユーザー設定の書式」を選び、塗りつぶしの色を決めて「OK」
Googleスプレッドシート
- B2:B21 を選ぶ
- メニューの「表示形式」→「条件付き書式」
- 右に出る画面の「書式ルール」で「カスタム数式」を選ぶ
=OR(B2<$E$5,B2>$E$6)を入れる- 「書式設定のスタイル」で塗りつぶしの色を選び、「完了」
この例では、B9(10/8の460,000円)だけに色が付きます。データの行を増やしたときは、式の B2:B21 と、色を付ける範囲の両方を広げてください。
4. 箱ひげ図で見る
数字の表だけでなく、図で見ると「1件だけ飛び出している」のがすぐわかります。そのための図が箱ひげ図です。Excel 2016以降で作れます。
作り方(Excel)
- B1:B21(見出しと売上)を選ぶ
- 「挿入」タブ →「統計グラフの挿入」→「箱ひげ図」
図の読み方
- 箱:Q1からQ3まで。真ん中の半分のデータが入る範囲です
- 箱の中の線:中央値
- ひげ:上限・下限の内側で、いちばん外にあるデータまで伸びます。この例では42,000円から60,000円
- 点:ひげの外にあるデータ。この例では460,000円が、はるか上にぽつんと出ます
Excelの箱ひげ図は、設定(データ系列の書式設定の「四分位数の計算」)によって、箱の位置が表の QUARTILE.INC の値と少しずれることがあります。外れ値を見つけるという目的なら、大きな問題にはなりません。正確な数字は、2.の表で確認してください。
なお、460,000円の点があると縦の目盛りが大きく広がり、箱がつぶれて見えます。元の書類を確認して数字を直すと、箱が見やすくなります。
5. 外れ値=必ず間違い、ではありません
色が付いたセルは、あくまで「確認する候補」です。
- 本当に大きな注文が入った日かもしれません
- 年に1回の大口の取引や、まとめての入金かもしれません
- 経費なら、機械や備品をまとめて買った月かもしれません
消したり直したりする前に、元の書類(請求書・領収書・通帳の記録など)を確認してください。 入力ミスなら正しい数字に直します。本当の取引なら、そのまま残します。必要なら、備考の列に「大口」などと書いておくと、あとで見返したときに迷いません。
外れ値を除いた平均を出したいときも、元のデータは消さないでおくのがおすすめです。
入力ミスそのものを減らしたいときは、入力規則(プルダウン)で入力ミスを減らす方法もあわせてどうぞ。
6. チェックリスト
- ☐ 平均(AVERAGE)と中央値(MEDIAN)を並べて出した
- ☐ 2つが大きく離れていないか見た
- ☐ QUARTILE.INC で Q1・Q3 を出し、IQR と上限・下限を計算した
- ☐ 条件付き書式で、上限・下限の外のセルに色を付けた
- ☐ 色が付いたセルは、元の書類で確認した
- ☐ 入力ミスは直し、本当の取引はそのまま残した(必要なら備考を書いた)
- ☐ 行を増やしたら、式と条件付き書式の範囲も広げた
まとめ
- 平均は1件の大きな数字で大きく動く。中央値はほとんど動かない
- 「Q1 − 1.5 × IQR」より小さい、「Q3 + 1.5 × IQR」より大きい数が外れ値の候補
- 条件付き書式の
=OR(B2<$E$5,B2>$E$6)で、候補に自動で色を付けられる - 箱ひげ図なら、飛び出した1件がひと目でわかる
- 外れ値は「確認する候補」。消す前に元の書類を見る
売上と経費の表の作り方は、個人事業主の売上と経費をExcelで管理する最低限の列にまとめています。値付けの計算なら、利益率と上乗せ率の違いも参考になると思います。
※この記事の計算例は検算しています。例の売上は説明用の架空の数字です。四分位の値は、Excelの QUARTILE.INC と同じ計算方法(位置 1+(n−1)×p の比例配分)で確認しています。
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